質問回答:人権トークセッション「一人ひとりの『らしさ』を大切にしあえるまちへ~SOGIハラ・アウティングのない社会とは~」

12月17日に開催された人権トークセッション「一人ひとりの『らしさ』を大切にしあえるまちへ~SOGIハラ・アウティングのない社会とは~」にていただいた質問について、当日時間の都合から、講師より後日回答いただくことになっていました。

講師にお招きした弁護士の山下敏雅さん、社団法人fair代表でライターの松岡宗嗣さんより質問への回答をいただいたので、こちらに公開します。

 

Q1.山下先生への質問

国立市在住です。条例ができ、パートナーシップ制度ができた国立で制度的な目標は今後どうなっていくでしょうか?

①制度の認知を広げていく

②都でのパートナーシップ制度の実施

など考えられるものは他にもあるかと思います。実際に議論に参加している山下さんのお考えを、大きな目標と小さな目標をそれぞれお聞きできればと思います。

Q1.山下さんからの回答

「小さな目標」としては、質問の中にあったように、制度の認知を広げていくことが大事だと思います。どんなによい制度ができても、市民の皆さんに知られることなく、活用されることがなければ、制度ができる前の状態と変わりなくなってしまいます。国立市の条例は在勤・在学も対象となっていますから、住所が市外でも市内に通勤・通学する方なら活用できますので、市の内外に広く知っていただけると思います。そして「大きな目標」としては、こうした国立市の動きが、現在の民法では結婚できない関係性の可視化と社会の理解を促進し、だれもが自由に結婚することができる、一人ひとりが大切にされる社会を築くことに繋がることだと思っています。

 

Q2.お2人に

渋谷区、世田谷区等、パートナーシップ制度が存在する自治体は全国で70余りありますが、制度や条例が認められやすいのは専ら都市部であるように思います。日本では先進的な制度であるがゆえに行政の場での組み込みの難しさも多くあると思います。メディアで取り上げられるのは、都市部の事例が多いです。地方でも同様の制度が導入されている事例はありますか?あるとしたらどのような例ですか?全国的にパートナーシップ制度が浸透していくまでにはどのくらいかかるでしょうか?(見通し)そのために何かアクションをおこしていることありますか、また地方で制度を導入する際の留意点も聞きたいです。

Q2.松岡さんからの回答

ご質問ありがとうございます。以下、ざっくりとですが、回答させていただきます。性的マイノリティに関する施策を行う自治体が都市部に集中していることや、報じられやすいのも都市部というのはその通りだと思います。一方で、パートナーシップ制度に関しては、地方でも導入される自治体も増えてきました。きっかけは「自治体にパートナーシップ制度を求める会」など、地元の当事者団体や個人が議会に陳情などを行い制度導入を求めた動きが大きかったのではないかと思います。以下のFacebookページ(自治体にパートナーシップ制度を求める会)では、導入自治体の数などをまとめているので、参考になるかと思います。https://www.facebook.com/partnership.lgbt/ 

現在約60自治体でスピード感は高まってきているとは思いますが、全国的に広がるにはまだまだ時間はかかるかなと思います(見通しを立てるのはなかなか難しいですね…)、本来はその前に国レベルで同性婚が認められてほしいなと思います。 一人ひとりができるアクションとしては、例えば地元の議会にパートナーシップ制度導入を求める請願や陳情を行うことも重要かと思います。 他にもパートナーシップ制度だけでなく、同性婚を法制化するために、自分の地元の国会議員に会いにいったり手紙を書いて、自分の選挙区にも性的マイノリティの当事者がいるんだということや、同性婚を求めているんだということを知ってもらうことが重要ではないかと思います。

Q2.山下さんからの回答

ご指摘のとおりパートナーシップ制度を設けている自治体は都市部が多いですが、他方で、小規模の自治体の取組みもけっして少なくありません。中には人口5000人ほどの宮城県木城町の例もあります。同性パートナーシップネットのウェブサイトhttps://samesexpartnership.wixsite.com/mysite-1/blank-8)をご覧ください。

2015年に渋谷区と世田谷区でパートナーシップ制度が始まると報道された時にも、「大都市の話」と受けとめる方は多くいらっしゃいました。しかし同じ年、日弁連への人権救済申立てを行った際、申立人は42都道府県・455人にも及び、「大都市の話ではなく、どんな地域にも当事者は暮らしている」ことが可視化され、地方の新聞報道・テレビ報道で多く取り上げられました。都市部と比べて地方が当事者が声を上げづらいのは確かですが、地方も含めて社会がゆっくりとよい方向に変化しつつあることもまた確かです。善いことはカタツムリのようにゆっくりと進むというガンジーの言葉を信じて、全国の隅々にパートナーシップ制度が広がるよう、一人ひとりがセクシュアリティについての理解を深め、一人ひとりを尊重しあうことが大切だと思います。